変形性膝(ひざ)関節症とは

 正常の膝関節の表面は軟骨で覆われています。変形性膝関節症では、加齢や肥満またO脚(きゃく)などの脚の変形が原因でこの軟骨がすり減ります(左図)。軟骨が削れて関節のなかに軟骨の破片やかすが出ると、関節炎を起こし水がたまったり(関節液の貯留)痛みが出たりします。さらにどんどん軟骨がすり減り、膝の変形が進行していくと、骨と骨が直接ぶつかりあうために歩行時に強い痛みがでたり、骨のとげ(骨棘)ができて膝が曲がりにくくなり正座ができなくなります。

変形性膝関節症の治療

 変形の程度により治療方法が異なり、変形が進むにつれ組み合わせて治療します。

● 変形性関節症の初期には「日常生活指導」と「運動療法」が効果的です。

 ● 日常生活指導 膝に負担のかかる階段昇降の繰り返し、長距離にわたるウォーキングやしゃがみ込み動作(草引き、和式の生活)は避けてください。できるだけ膝に負担をかけない運動(水泳やサイクリングなど)に変更してください。

● 運動療法 太ももの筋肉である大腿四頭筋訓練の強化が重要です。この訓練は膝の痛みを和らげる効果があります。(膝を伸ばす運動、パテラセッティング  20回程度朝夕で行いましょう)


●変形性関節症の初期から中期は「薬物療法」や「PRP療法」を併用します

● 薬物療法 痛み止めの飲み薬、外用の湿布薬や塗り薬を使ったり、関節の炎症を和らげたり痛みを軽くするヒアルロン酸を関節内に注射をしたりします。

● PRP療法 比較的新しい治療であるPRP(多血小板血漿)療法は、患者さん本人の血液中の組織修復する成分を抽出し患部に投与することで、本来 体がもつ“自己修復力”を 増大させる治療です。自分の血液を用いるため重篤な副作用がないことが特徴です。(PRPのページ)

● 変形性関節症の末期になると治療は「手術療法」が主体となります。

● 人工関節手術 

 人工関節手術は日本国内で膝関節において約年間10万件が行われ、変形した関節の一般的な治療法になっています。人工関節手術によりほとんどの方の関節の痛みがとれますので、関節の痛みのために外出できなかった方が旅行できるようになったり、ゴルフなどのスポーツに復帰するなど、生活の質(QOL)に大きな改善が望めます。

 最近は関節の機能向上をめざして「ロボット」支援による手術を2022年1月から開始しています。精度が非常に高いため患者さん個々の膝の特徴に合わせたテーラーメイド手術が可能となりました。

 術前後のリハビリは、手持ちのスマホを利用して支援することも可能です。(専用アプリ マイモビリティ)

 

➡人工膝関節全置換術 膝関節の変形が高度な患者さんは、膝の関節の表面をすべて人工関節に置き換える手術を行っています。しかし最少侵襲手術により、車椅子や歩行器を使用しての歩行によるトイレへの移動は手術の翌日から可能ですし、Tステッキによる自立した歩行は手術の1週間前後から開始され、全体の約8割の患者さんが家事などの身の回りのことができる手術後約2週間で退院となります。

➡人工膝関節単顆(たんか)型置換術  膝の変形の程度が比較的小さい患者さんは、膝の損傷した内側または外側部分だけを交換する単顆型置換術を行っています。膝の主要な靭帯はすべて残りますので、スポーツ復帰は容易ですしよく膝が曲がります。人工膝関節手術の全体の約2割の方に単顆型人工関節を行っています。

● 高位脛骨骨切り術(HTO) 

 60代前半までの比較的若年の患者さんが対象です。O脚のために膝の内側の軟骨がすり減った場合に、脛骨(すね)の骨を切ってX脚方向へと矯正し体重のかかる膝の環境を変える手術です。生来の膝が残るため激しいスポーツ復帰には有利ですし、何より膝の痛み(除痛)には効果的です。

➡実際には内側から骨を切ってできた隙間に人工の骨を挟み込む方法と(図)、外側からくさび状に骨を切る方法とがあり(図)、矯正の程度により使い分けをしています。さらに軟骨が傷んでいる部位にほとんど使われていない場所の軟骨を採取して患部に移植する骨軟骨柱移植術(モザイクプラスティ)や、内視鏡による傷んだ半月板を作り直す手術(鏡視下半月形成術)を組み合わせて対応しています。